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2025.07.12
メインテーマ演奏 マーティ・フリードマンさんのスペシャルインタビュー

マーティ・フリードマン SPECIAL INTERVIEW
※本記事は米・Crunchyroll Newsからの転載です

取材・文/Alex Lebel

「ニャイト・オブ・ザ・リビングキャット」のPVを見て、まるでゾンビ映画のように猫達が現れた時点で斬新な設定に驚いたが、さらに重厚なメタルソングまで流れてきたので、もう完全に心を奪われた。これ以上ない最高の組み合わせだ!
そしてもうひとつ嬉しいサプライズがある。この作品のテーマ曲でギターをかき鳴らしているのは、なんと伝説のギタリスト、マーティ・フリードマンだ。彼は何十年もリフを奏で続け、メガデスでの活動をはじめ、テレビやアニメ、そしてソロ活動でも幅広く活躍し、音楽史上最も象徴的なギタリストの一人として知られている。
作曲家・遠藤浩二がギターにマーティを迎え、ボーカルとしてブッチャー・ベイビーズのハイディ・シェパードも参加しているこの曲は、この夏一番熱いサウンドトラックになるに違いない!
Crunchyroll Newsではマーティ・フリードマンに、「ニャイト・オブ・ザ・リビングキャット」のメインテーマでの演奏や、日本での生活が音楽に与えた影響について話を聞いた。

―以前にもアニメの音楽を手がけられたことがありますが、本作のようなアニメの音楽を担当すると思っていましたか?

マーティ:まさか!この作品のストーリーはもう異世界レベルだよ。すごく新鮮で面白いと思う人が多いはず。今までやったアニメ作品も全部楽しんだけど、これは「うわっ!」って感じだった。このアイデアは多くの人がすぐにハマると思うし、声をかけてもらってすごく光栄だったよ。曲自体も作品の雰囲気をすごくよく表してたから、演奏もすごく自然で楽しかった。

―まさに「アニメにしか描けない物語」って感じですよね。そこがもう魅力です。

マーティ:本当にそうだね。

―このプロジェクトで、特に惹かれた点はどこですか?

マーティ:まず、曲がまさに自分の得意分野だったってこと。僕は普段、いろんなジャンルの音楽をやってるんだ。例えばピアソラのコンサートに出たり、オーケストラと共演したり、日本のアイドルとも。でも、やっぱり僕が生まれ持った音楽はメタルなんだ。今回の曲は、本当に血の中に流れてる感じで、他の音楽的な側面を無理に引き出す必要もなかった。ただ自然に出てきた。それがすごく心地よかったね。

―アニメの音楽に関わりながら、自分らしくいられるって素敵ですね。

マーティ:そうだね。普段は、細かく要望があることが多いんだけど、今回は「ギターを弾いてくれ」ってだけだった。曲作りには関わってないんだけど、それが逆に気楽で楽しかった。「このトラックだ、最高にかっこいいぞ。メタルだ。じゃあストーリーに合わせて行ってくれ!」みたいな流れでね。自分にはすごく自然な体験だった。

―この曲の演奏にあたって、どんなアプローチをしましたか?ライブでの演奏と比べて違いはありましたか?

マーティ:メタル曲ってことは間違いない。でも昔から、歌詞のコンセプトをギターで表現しようとすることを学んだんだ。もちろん歌詞が抽象的だったり難解だったりすると難しいけど、例えば宇宙人の曲なら「火星から来たぞ!」って感じで弾くとか。でも今回みたいにビジュアルがはっきりしていて、猫が出てくるってわかっていると、それに集中しやすい。今回はビジュアル的にもストーリーがすごく明確で、しかも猫が登場する。僕の昔のバンドの曲に「Black Cat」って曲があって、その時プロデューサーに「ギターを猫の鳴き声みたいにしてくれ」って言われたことを思い出したんだ。それがずっと頭に残ってて、今回もそれを思い出して、ギターを猫っぽく…たとえ聞いてる人が無意識でも、「猫っぽい」って感じるようなギターにしたくて、ガナり声みたいに聞こえるように意識した。

―そう言われると、もうその音がずっと耳に残りそうです。
 ボーカルを担当したブッチャー・ベイビーズのハイディ・シェパードとの共演はいかがでしたか?

マーティ:最初にデモを聞いた時は、彼女はまだ参加してなくて、どんな仕上がりになるのか分からなかった。でも彼女の音楽は知ってたから、きっとバッチリ決めてくれるって確信してた。アメリカかヨーロッパのフェスで同じステージに立ったこともあって、彼女のパフォーマンスはすごかった。僕はたぶん彼女が参加する前に自分のパートを終えてたけど、最終的に完成版を聞いた時は、やっぱり「大ホームラン」だったよ。

―メタルファンにとっては夢の共演ですよね。あなたと彼女が同じ曲にいるなんて。

マーティ:そうだね。現代的な制作スタイルで、同じ国にいなくても一緒に作品を作れる。プロジェクトのキャスティングを考えた人が、本当にいいビジョンを持ってたんだと思う。完成した曲を聞けば、それが分かるはず。

―日本に住むようになってから、作曲にどんな影響がありましたか?

マーティ:もちろん、日本のあらゆるジャンルのミュージシャンとのコラボには影響を受けている。でも、長く音楽をやってると、実は音楽そのものよりも、生活スタイルとか人生のペース、人との出会いみたいな音楽以外のことがより大きく影響するようになるんだ。音楽制作のプロセスもアメリカと日本では全然違うしね。そういう違いを経験することで、自分の音楽もカメレオンみたいに柔軟に変化してきた。日本では、予想外のことがよく起きるから、それに適応する力がついて、結果として成長できてると思う。

―いろんなアニメの制作現場で、特別な演出や独特なリクエストもあったでしょうし、それも勉強になったんですね。

マーティ:そうそう、本当に。

―日本に来る前からアニメに興味はありましたか?それとも来日してから?

マーティ:面白いんだけど、これだけアニメの曲に関わっておきながら、実はアニメそのものにはあまり詳しくないんだよ(笑)。関わるプロジェクトについては、エピソードを観たり、キャラのことを教えてもらって学んだりはするけど、マニアってほどではない。来日する前も、言語学習のために観てたことはあるけど、アニメの知識は意外と浅い。でも、アニメはここ10年で本当に進化したと思うし、どんどん世界中の人を魅了してる。それってすごいことだよ。

―アニメには重い音楽がよく使われますし、海外の人が初めてメタルに触れるきっかけにもなってます。アニメファンとメタルファンが重なる理由について、何か考えがありますか?

マーティ:個人的な考えだけど、最初は日本の初期アニメの時代にまでさかのぼると思うんだ。その頃から「アニソン」にはギターリフやソロが入ってたんだよ。かなりオールドスクールではあるけど、それでも「ギター」が土台にあった。ギターっていうのはメタルの基盤だから、それが時代とともにどんどんメタルっぽくなっていった。だから、海外の人たちがアニメを通してメタルの音に出会うのも自然な流れだと思う。
日本では、メタルに興味がない人でもアニメを通してメタルに触れるから、ジャンルにとらわれない音楽の楽しみ方がある。「メタル以外認めない!」って雰囲気じゃないんだよね。僕の海外ファンの中にも、アニメがきっかけで僕を知った人がすごく多いよ。ギターファンでも、メタルファンでもないけど、アニメから日本に興味を持って、そこから僕を知ってくれた人たちがたくさんいる。『Tokyo Jukebox』シリーズとかを見つけてファンになってくれるのは本当にありがたい。あと、単純に日本に興味がある人も多い。僕はそういう人たちの「夢の案内人」みたいな存在でいられたら嬉しいなと思ってる。日本の文化に惹かれる気持ちはすごく分かるし、僕も夢を叶えるために日本に来て、努力してここまで来たから。言葉がカギなんだ。僕を見て「自分もやれるかも」って思ってくれるなら、それはすごく嬉しい。

―とても素敵なお話です。これからもアニメとメタルの架け橋として活躍し続けてください!
最後の質問ですが、今まで観たアニメの中で、「このキャラ、バンドメンバーにしたい!」と思うキャラはいますか?

マーティ:それは面白い質問だね。でも、今のバンドメンバー以上に一緒にやりたいって思うキャラは正直いないな。僕のバンドって、性格や音楽性、人間性のバランスがすごく独特なんだ。だから素晴らしいミュージシャンはたくさんいるけど、僕のバンドに合う人は本当に少ない。実際に僕のバンドを見ればわかると思う。だから名前は挙げられない。ごめんね。

―いえ、むしろ今のバンドが完璧ってことが一番いい答えですよ。バンドメンバーへの愛を感じます。

マーティ:そう言われると確かにそうだね。本当に僕の仲間たちは最高なんだ。誰にも代えられないよ。